干し椎茸には多くの栄養成分が含まれていますが、その中には水に溶けやすい性質を持っているものもあります。ということは、干し椎茸を戻す間、戻し汁にはじわじわと栄養もうま味も染み出している…干し椎茸の戻し汁は、栄養とうま味の宝庫なのです。
ぜひ、毎日のお料理に活用してください!
干し椎茸の戻し汁とは
原木しいたけは、植菌したクヌギの原木から自然に発生したしいたけを収穫したもの。年中できる菌床しいたけとは違って、春と秋、気象条件が揃った一瞬のうちにしか収穫できない貴重な食材です。
そのため、原木しいたけを一年中食べようと思ったら保存が必要なので、乾燥させて一定の温度・湿度で保管します。そして食べるときには、乾燥させた干し椎茸をまた軟らかく戻すため水に浸します。
このとき、干し椎茸を浸した水には栄養成分が染み出して茶色く色づきます。これが「干し椎茸の戻し汁」です。
干し椎茸の戻し汁の作り方
干し椎茸の戻し汁は、
(1)干し椎茸
(2)水
(3)タッパー
この3つさえあれば誰にでも作れます。
タッパーに干し椎茸を入れて、水を注ぎ、干し椎茸が軟らかくなるまでほったらかし!
加熱調理する必要も、手を加えることもなくカンタンにできあがります。
ただし、栄養素やうま味成分をより引き出すため、戻し方にはちょっとこだわりましょう。
「冷蔵庫で一晩」がお約束
干し椎茸本来の味をよく引き出す戻し方が、冷蔵庫で一晩寝かせてじっくり冷水で戻す方法だと言われています。時間にして約10時間くらい。
「一晩」と聞くと時間がかかって手間だと思いがちですが、ちょっと考えてみてください。夕方18時頃、晩ご飯の準備にしいたけを使い、空っぽになったタッパーにまた干し椎茸と水を加えて冷蔵庫に入れたとしたら? 翌朝6時には12時間が経っていますから、朝ご飯の準備に間に合いますよね!
「使ったら足して冷蔵庫へ」のサイクルを習慣にしていれば、三度の食事にしいたけの準備は常に万全というわけです。しかも理想的な状態で!
また、だいたい5℃くらいに設定されている冷蔵庫内の温度は、干し椎茸本来の味を最大限に引き出します。
水の量は「ひたひた」がベスト
干し椎茸の量に対して、どのくらいの水を注げばいいのか? 特にきっちり決まった分量はないのですが、当然しいたけに対して水の量が多すぎれば戻し汁の濃度は薄くなり、水が少なければ使える汁自体が少なくなります。
用途に合わせて加減をしてもよいと思いますが、一般的には「しいたけがひたひたに浸かるくらいの水」で戻すのがいいとされています。
では、「ひたひた」の水でどれくらいしいたけの戻し汁ができるのでしょうか?
一度にある程度の量が必要な場合はフタ付きタッパーがおすすめ
タッパーなら、500ml程度のサイズがおすすめ。これに普通サイズの干し椎茸を5個入れて、フタを閉めても水が溢れない程度の水(約2カップ)を注ぎます。
このとき、軽い干し椎茸は水に浮くので、フタを閉めたとき、フタがしいたけを水に沈める役割をしてくれるんです。
こうして水で戻したとき、約1.5カップの戻し汁を作ることができます。一度にある程度の量の戻し汁を作りたいときには、このタッパーで戻す方法がおすすめ。
めんつゆを作りたいときなど、大量に必要なときは1000ml以上の大容量のタッパーで戻したり、ボウルにラップをかけても良いと思います。
たくさんの干し椎茸を戻したい場合はジッパー付きのビニール袋がおすすめ
ビニールの保存袋は形が自由に変えられるため、冷蔵庫の空きスペースでしいたけを戻せて便利です。空気を抜けば、軽くて浮いてくるしいたけをずっと「ひたひた」の状態にできるのもいいところ。
あまり戻し汁は必要ないけれど、たくさんのしいたけを戻したいときには保存袋のほうがおすすめです。たとえば10個のしいたけに、ひたひたになるくらいの水(約2〜3カップ)を注いだら、約1.5〜2.5カップの戻し汁を作ることができます。
干し椎茸の戻し汁を捨てていませんか?!戻し汁は栄養の素、うま味の素!賢くフル活用できます!
▼老舗 椎茸問屋 姫野一郎商店「山の幸シリーズ」 大きさ・厚さで選別されたバリエーション豊かな 家庭用乾しいたけはこちらから↓
戻し汁の保存方法
できあがった戻し汁は、戻したしいたけと同じタイミングで料理に使えると良いですが、しいたけを炒め物に使いたい場合などは、戻し汁だけ使わずに余ってしまいますよね。
そんなとき、戻し汁は「冷凍」して保存しましょう。保存袋やタッパーに入れたまま、あるいは製氷機で凍らせると、あとあと必要な分だけ小分けにして使えるのでとても便利です。
戻し汁の保存期間
干し椎茸の戻し汁は、冷蔵庫での保存も可能です。ただしその場合、1週間以内に使い切らないとアクが強くなり、口にするとエグ味を感じるので注意しましょう。せっかくの香りも風味も台なしになります!
冷凍保存する場合は、香りや風味を損なわず、1か月ほど保存が可能です。とはいえ次々に溜まっていきますので、毎日お味噌汁に入れるなどして早めに使うことをおすすめします。
干し椎茸の戻し汁の栄養価
以前、このブログで干し椎茸と生しいたけ(原木)の栄養成分を比べてみました。
乾しいたけのトマトカレー
しいたけの主な栄養
〈食物繊維〉
○乾しいたけ[46.7g/100g]
○戻した乾しいたけ[11.7g/100g](戻し率4倍)
○生しいたけ(原木)[5.5g/100g]
戻した乾しいたけと生しいたけ(原木)を比べると、食物繊維は生しいたけより約2倍!
食物繊維は、整腸効果、血糖値上昇の抑制、血中コレステロール濃度の低下など多くの生理機能が明らかになっている成分です。
〈ビタミンD〉
○乾しいたけ[17.0μg/100g]
○戻した乾しいたけ[4.3μg/100g](戻し率4倍)
○生しいたけ(原木)[0.4μg/100g]
戻した乾しいたけと生しいたけ(原木)比べると、約10倍のビタミンDになります!
脂溶性ビタミンの1つで、身体の機能を正常に保つ働きを持ち、強い骨を維持するためや健康のために必要な栄養素です。
出典:*厚生労働省e-ヘルスネット「ビタミン」 *厚生労働省eJIM「ビタミンD」
〈レンチナン〉
干し椎茸特有の香りの成分。β-グルカンの一種で、免疫作用を高めると言われている成分です。しいたけから精製されたレンチナンは抗がん剤にも使用されています。
〈エリタデニン〉
血圧抑制、血管のつまりやコレステロールの増加を防ぐ効果があると言われている成分です。
〈葉酸〉
葉酸はビタミンB群の一種で、赤血球の形成やDNA合成に関わると言われており、全ての世代の人にとって必要な栄養素です。
出典:*厚生労働省e-ヘルスネット「葉酸」 *厚生労働省eJIM「葉酸」
戻し汁の活用方法
干し椎茸の栄養を余すところなく摂取すべく、いろいろな料理に戻し汁を活用しましょう。特に使いやすいのは、こんな料理です。
煮物
煮物を作る際、水を注ぐタイミングでまず干し椎茸の戻し汁を加え、足りない分だけ水を足しましょう。炊いている途中にアクが浮いてくることがありますので、その場合はこまめに取り除いてください。あとは普通に調味料で味付けを。
みそ汁
みそ汁はダシが命! 干し椎茸のうま味成分「グアニル酸」は、カツオ節に含まれる「イノシン酸」と同じ核酸系のうま味成分で、これはコンブに含まれる「グルタミン酸」と合わせると相性が良いんです。
朝食にみそ汁をつくるなら、寝ている間、干し椎茸の戻し汁を鍋に入れ、そこにコンブを浸して。朝、それを火にかけ、沸騰したらコンブを取り出して具と味噌を加えましょう。
雑煮の出汁
干し椎茸の戻し汁を使ったお雑煮の汁は、甘みのあるふくよかな風味。コンブやイリコを合わせても美味しいですが、戻し汁だけで十分な味がでます。戻し汁(足りなければ水を足す)を沸騰させ、塩か醤油で味を整えて。
そばつゆ
そばつゆは濃いめに仕上げたほうが麺と相性が良いので、まず、干し椎茸の戻し汁にコンブ、カツオを加えてダシを作ります。このダシ(2):醤油(1):みりん(1)の割合で鍋に入れ、ひと煮立ちさせたらできあがりです。
そうめんつゆ
そうめんは、そばと違ってあっさりしたつゆがおすすめ。しいたけの甘い風味と好相性です。干し椎茸の戻し汁(3):醤油(1):みりん(1)の割合で鍋に入れ、ひと煮立ちさせたらできあがり。このとき、干し椎茸のスライスを一緒に煮立たせるとさらに美味しくなります。
まとめ
干し椎茸の戻し汁は、料理を美味しくしてくれるばかりか栄養も豊富な優れもの! しかも、戻し方がカンタンなうえ、保存も効く万能選手。これを捨てるなんてもったいないことです!
さらに、姫野一郎商店が扱う最高級、最高品質の原木栽培干し椎茸で作る戻し汁は、香りも風味も格段に違う、本物の美味しさです。ぜひご賞味ください!
▼老舗 椎茸問屋 姫野一郎商店「山の幸シリーズ」 大きさ・厚さで選別されたバリエーション豊かな 家庭用乾しいたけはこちらから↓