しいたけの戻し汁は、グアニル酸由来の旨み成分も栄養価もかなり豊富で、そのまま「しいたけ出汁」として使えます。しいたけそのものもですが、このしいたけ出汁も日々の食卓にぜひ取り入れてほしいものです。
とはいえ、「戻す手間がかかるのよね」と、まだ戻し汁を活用できていない人、いるのではないでしょうか?
そんな方々のために、今回はしいたけの戻し方のおさらい!さらに、戻すタイミングを想定して、「戻し時間が違うと旨みも違うのか?」を一般の人目線で実験してみました。戻し汁の活用法まで、一気にお届けします!
※味覚センサーのような計測器は使っていない、あくまで個人で試してみた実験です。
干ししいたけの戻し方(しいたけ出汁の基本の作り方)
しいたけ出汁(戻し汁)は
(1)干ししいたけ
(2)水
(3)タッパー
があれば誰でも簡単につくれます。作り方は
「タッパーに干ししいたけと水を入れ、冷蔵庫でひと晩寝かせるだけ! 」
ほら、1行で説明できちゃいました!(笑)
しいたけと水には決まった分量はなく、お好みで加減してOK。ただし、しいたけ本来の味と香り、旨みと栄養価をよ〜く引き出すには、冷蔵庫でひと晩寝かせて、じっくり冷水で戻す方法が良いと言われています。
冷蔵庫の温度はだいたい5℃、時間は約10時間くらいになります。これが、基本の戻し方。
説明したとおり、時間は約10時間が理想と言われていますが、では戻し時間が違うと旨みも違うのでしょうか?!
そもそも、「干ししいたけは戻す手間がかかる」という人にとっては、この戻し時間がネックなはず。ひと晩寝かせる「タイミング」さえ掴めれば、しいたけのある暮らしを楽しめるようになるのでは?!
そこで、しいたけの戻し時間を変えて、次のような実験をしてみました。
最強のしいたけ出汁の作り方はどれ?実験してみました。
「ひと晩」と聞くと、1日24時間たっぷり寝かせておかなければならない気がしますが、そんなことはないんです。感覚的には「寝ている間に」というくらい。
一般的に、干ししいたけを水に浸しやすいタイミングを考えてみると、家族が揃って食事をすることが多い朝か夜のタイミングではないでしょうか? そうすると、次のような理由で、「6時間」あるいは「12時間」という数字がキーワードになりそうです。
A:朝ご飯の準備をするとき
たとえば午前6時に朝食の支度を始めるとして、その流れでしいたけを戻し始めたら、午後6時にはたっぷり12時間かけて戻し終わっています。
だとすると、夕食の準備に間に合いますね! 毎朝おみそ汁をつくる人なら、しいたけの具も戻し汁も活用して、次の日用に戻すというルーティンにしても良さそう。
B:夕ご飯の準備をするとき
朝ごはんの逆で、夕食をつくるのが午後6時だとして、その流れでしいたけを戻し始めたら、翌朝6時にはたっぷり12時間かけて戻し完了。朝ごはんにも昼ごはんにも活用できます。
C:寝る前
ちょっと遅めかもしれませんが深夜0時に寝るとして、寝る前にしいたけを戻し始めると、午前6時まで6時間。AとBに比べて半分になってしまいます。
【実験1 戻し時間によって旨みは違うのか?】
というわけで、6時間と12時間の2パターンで、水戻ししいたけをつくってみました。分量は、下記の通り。小さめのタッパーひとつでもつくりやすい量です。
干ししいたけ…20g(どんこ5粒)
水…500cc
【実験結果】 「10時間以上冷蔵庫で寝かせる」としいたけの旨みは全く違うことが判明!
◎6時間かけた干ししいたけの戻し汁
色 :☆☆☆
香り:☆☆
旨み:☆☆
◎12時間かけた干ししいたけの戻し汁
色 :☆☆☆
香り:☆☆☆☆☆
旨み:☆☆☆☆☆
夕食の支度時に仕込んで12時間、寝る前に仕込んで6時間。どちらも、冷蔵庫内で寝かせて水戻ししました。
結果、並べて色を比べてみると、ほとんど差はありません。見た目だけで判断すると、同じ結果のように見えます。
ところが! まず、タッパーのフタを開けてみたときの香りが全然違います。12時間のほうは、ガツンとしいたけの香りがするんです。
さらに、そのまま戻し汁を飲んでみたところ、12時間水戻しした干ししいたけのほうが驚くほど味が濃い!!
6時間のほうも、それなりに味はありますが、薄い印象。それに、しいたけそのものの戻り具合も8〜9割程度といった感じでした。
味覚センサーのような計測器は使っていない、あくまで個人で試してみた実験ですが、本当に驚くほど味の違いがありました。
やはり、「10時間以上」というのが理想的なんですね。12時間という時間をかけたら、しっかり旨みを引き出せていました。
【実験2 しいたけの量が多いと短時間でも旨みは強い?】
では、干ししいたけの量の違いで旨みは変わるのでしょうか? 実験1の量の倍以上、50gの干ししいたけを同量の水で戻して比較してみました。
【実験結果】 量が多くても、短時間だと十分な旨みは引き出せない。
◎干ししいたけ20g:水 500cc、12時間冷蔵庫で戻した場合
色 :☆☆☆
香り:☆☆☆☆☆
旨み:☆☆☆☆☆
◎干ししいたけ50g:水 500cc、6時間冷蔵庫で戻した場合
色 :☆☆☆☆☆
香り:☆☆☆☆
旨み:☆☆☆
これは、色を比べてみると50gのほうが濃いですね。
ただし! 量が少なく色が薄くても、味はやはり12時間戻しの勝ち! 20g6時間のしいたけよりは濃いですが、12時間たっぷり水戻ししたしいたけの旨みには敵いません。
ただし、50g6時間のほうも、料理には使っても良いかな、というレベルでした。
【実験3 冷蔵庫で戻す場合と常温で戻す場合の違いは?】
さらに、冷蔵庫で絶対に戻さなきゃいけないの?というのも気になります。
干ししいたけ…20g(どんこ5粒)
水…500cc
冷蔵庫で絶対に戻さなきゃいけないの?というのも気になります。どちらも同じ量で12時間、冷蔵庫内で水戻しした場合と、常温で水戻しした場合の比較をしてみました。
【実験結果】 常温で戻すと戻りは早いが、冷蔵庫で戻した方が旨味は強い!
◎冷蔵庫内で戻した場合
色 :☆☆☆
香り:☆☆☆☆☆
旨み:☆☆☆☆☆
◎常温で戻した場合
色 :☆☆☆☆
香り:☆☆
旨み:☆☆☆
常温のほうが、しいたけ自体の戻り方は早いようで、6時間たった頃にはふっくらしていました。それに、色も常温で戻したほうがやや濃くて、味も濃そう。
ところが! やはり、そのまま飲んでみると、常温のほうは色のわりに味が薄く、冷蔵庫で戻したもののほうが旨みが強いんです。
以上3つの実験から、「冷蔵庫内で10時間以上」の水戻しが最強だということがわかりました! 普段何気なく使っていましたが、こうして比べてみると、やはり正しく戻すことがどれだけ大切か、痛感しますね。
そしておまけに、どんこそのままと、スライスしいたけを水戻しした場合も試してみたんです。
【実験4 スライスしいたけでも十分に旨みが出る?】
スライス干ししいたけは、カットされている厚みがぶん薄く、早く水に戻るという特徴があります。これなら6時間でも十分旨みが出るのでしょうか?! 試してみました!
【実験結果】 スライスしいたけは短時間でも旨みが出やすい!
◎どんこを6時間かけて冷蔵庫で水戻しした場合
色 :☆☆☆
香り:☆☆
旨み:☆☆
◎スライスしいたけを6時間かけて冷蔵庫で水戻しした場合
色 :☆☆☆☆
香り:☆
旨み:☆☆☆
同じ20gでも、スライスはかさが多くたっぷりの量になります。
スライスしいたけは、6時間でもしいたけ自体はふっくらと戻って、すぐにでも使える状態。そして、戻し汁の色もずいぶん濃いですし、味もどんこまるごとに比べるとやや濃い感じ。
これなら、6時間の戻し汁でも使えそうだし、12時間かければもっと旨みが強くなりそうです。
ただし、残念だったのが「香り」。まるごと戻した場合に比べて、香りが弱いんです。スライスしてから乾燥させているため、香りが逃げていくんですね。
干ししいたけの戻し汁(出汁)の保存方法と活用法
干ししいたけの戻し汁は、すぐに使わなければ1週間ほどそのまま冷蔵庫で保存が可能。
タッパーで密封するのが最適ですが、量が多かったり1〜2日ぶんたまった場合は、冷茶用のガラスポットなどに入れるのもおすすめです。これだと使いやすいので「料理に使おう!」という気分になれますよ。
1週間以上経ってしまうと、見た目は変わりませんが味が渋くなってしまいますので、おすすめできません。長期保存の場合は、冷凍してください。
電子レンジでもできる「しいたけ出汁のめんつゆ」作り方
また、せっかくできたしいたけ出汁なので、ストックしておくと便利な「めんつゆ」を作っておくのもおすすめです。作り方も簡単!
「しいたけ出汁のめんつゆ」の作り方
しいたけ出汁…300cc
醤油…100cc
みりん…100cc
砂糖…大さじ1
かつおぶし(お好みで)…50g
以上を耐熱容器に入れ、電子レンジで3分(600w)チンするだけ! あるいはお鍋で沸騰させて、弱火で1分ほど煮てください(アクが出てくるのできちんとすくうこと)。
まとめ:実験からわかったのは「冷蔵庫で10時間以上の水戻しが最強」ということ!
今回の実験で、次のことがよくわかりました。
◎ 冷蔵庫でひと晩=最低10時間以上水戻しすると旨みと香りを最大限に引き出せる
◎ たくさんの量のしいたけをいちどに水戻しする場合も、10時間以上かけると良い
◎ スライスしいたけのほうがより短時間で理想の戻し汁に近づけるが、香りは弱い
10時間以上寝かせることがベストだと、あらためてわかったので、干ししいたけを戻し始める「タイミング」は
◎ 朝食をつくるとき→夕食まで
◎ 夕食をつくるとき→朝食まで
この2つのパターンが良さそうですね。
朝食→夕食→朝食…と、なくなった都度しいたけを戻す作業を習慣化すれば、いつでもベストなしいたけと、しいたけ出汁が活用できます。健康のためにも、ぜひやってみませんか?!
生しいたけの30倍!?干し椎茸の栄養素・栄養成分を徹底解説
今回の実験に使ったしいたけは、家庭用におすすめの2種類
▽ おすすめ!山の幸 どんこ(100g)
姫野一郎商店のネットショップからもご購入いただけますので、ぜひお試しください。
また、こちらの記事もぜひ参考にしてください!
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