しいたけは、栽培方法によって「原木しいたけ」と「菌床しいたけ」の2種類に大別されます。姫野一郎商店が扱っているのは、味も香りも最高の原木しいたけです。
今回は、なぜ「菌床しいたけ」より「原木しいたけ」のほうが美味しいのか、その魅力にとことん迫りたいと思います!
そもそも「原木しいたけ」とはなに?
原木しいたけとは、自然栽培されたしいたけのこと。
自然の森のなかで、しいたけ菌を打ち込んだ原木に生えるのが原木しいたけ。自然の気象条件を利用して栽培される原木しいたけは、1年のうち春と秋にだけ発生します。そのため、一年中いつでも使えるように乾燥させて保存するので、「原木しいたけ=乾しいたけ」のことと考えてください。
春と秋の収穫期だけ、原木の生しいたけが流通することもありますので、「原木生しいたけ」「原木乾しいたけ」と呼び分けることもあります。
「菌床しいたけ」と「原木しいたけ」の違い
姫野一郎商店ではこれだけ原木しいたけこそ本物のしいたけだとおすすめしていますが、スーパーでは「菌床しいたけ」のほうをよく見かけると思います。
なぜなら、菌床しいたけは人工栽培で、3~6か月ほどのサイクルで次々に収穫できるため、一年中「生しいたけ」の状態で流通させやすいのです。消費者の方々にとっては、水に戻す必要のない「生しいたけ」のほうが、調理に使いやすいですよね。それに、菌床しいたけは肉厚で食べ応えがあるのも利点。
ただし、「菌床しいたけ」では「原木しいたけ」のうま味、香り、栄養には勝てません。
「原木しいたけ」の【原木】って何の原木を使ってるの?
しいたけの栽培は、【原木】を伐るところから始まります。森のなかの木を伐り倒し、90~120cmの長さに揃えて伐り、これを【原木】とするのです。
【原木】に適しているのは、クヌギ、コナラ、ミズナラなどいわゆるドングリがなる木。これらは樹皮が比較的厚いため内部に養分を蓄えやすく、乾燥しにくいためしいたけ菌が蔓延しやすいと言われています。
大分県ではほとんどの農家がクヌギの木を使用しています
大分県で【原木】に用いられているのは、ほとんどがクヌギの木です。昔から大分の森にはクヌギの木が多かったことや、クヌギは成長が早く、8~15年ほどの短い間に原木に適した太さになることから、姫野一郎商店がある一大産地の竹田をはじめ、県内全域で重用されています。
「原木しいたけ」はどうやって作られる?
伐り倒したクヌギの【原木】には、しいたけ菌である「タネコマ」を打ち込みます。これを「植菌」と呼びますが、これが終わったらあとはしいたけが発生するのを自然に待つだけ!・・・と思ったら大間違いなんです・・・
タネコマを打ち込んだ原木は、長い長い培養期間に入ります。これを「伏せ込み」と言います。
伏せ込みの期間は、なんと1年半! 毎年2月~3月頃に植菌するのですが、それからふた夏が過ぎるまで伐採地などで横にして寝かせておくのです。
「伏せ込み」を行う理由
何のために「伏せ込み」を行うのかというと、しいたけ菌糸を原木全体に蔓延させるため。
その間もただ寝かせておくだけではなく、状態が良いかどうか管理はかかせません。しかも、一人のしいたけ農家さんが一度に管理する原木の数は、多くて何千本、何万本にもなるのですから! 大変な作業です。
ふた夏めが過ぎた秋にようやく原木を起こし、2本の原木が支え合うような形に原木を組みますが、この組み方やどこに組むかなど、それぞれの生産者さんのこだわりがあるようです。
そして、起こした原木に厳しい冬の寒さを経験させた後、春の温かい空気があたると、ようやく原木しいたけが発生! 原木を伐ることから始めてしいたけが発生するまで、なんと2年以上かかります。
原木しいたけが貴重な食材である理由、おわかりいただけましたでしょうか?
原木しいたけ栽培に適した環境
古来、しいたけは人が栽培するのではなく森のなかの木に自然に菌が着生して発生していました。そのため、現在の自然栽培の原木しいたけも、古来の環境とまったく同じ、直射日光があたらず適度に木漏れ日が差し込む湿った森のなかがぴったり。原木を並べた栽培地には、広葉樹を植えて直射日光を遮る工夫もされています。
風通しがよくて涼しく、適度な湿度が保たれていることも良い栽培環境の条件。風通しのよい原木の組み方を工夫したり、降水量が少ない場合は水を与えたり、ここにも生産者さんたちの技術が光ります。
ホダ場・ホダ木・タネコマについて
ここまで、原木しいたけの栽培方法をご紹介してきましたが、
原木しいたけを育てるためには、3つのものが必要です。
①ホダ場 ②ホダ木 ③タネコマです。
①ホダ場
ホダ場とは、例えるならしいたけにとっての「畑」。原木しいたけの栽培地のことを「ホダ場」と言います。
山間地をドライブしていると、ときどき逆Vの字に木を組んで並べている場所を見かけませんか? それがホダ場です。
ちなみに「ホダ」とは、もともとはたきぎに使う木の切れ端のことを言いますが、これが転じて、木を伐ったものである原木にも用いられるようになったのかもしれません。
②ホダ木
【原木】に使う木のことを「ホダ木」と呼んでいます。原木の意味でホダ木と呼ぶこともありますが、ホダ場が【畑】なら、ホダ木は【土】というところでしょうか。
③タネコマ
ホダ場にあるホダ木に打ち込むのが、しいたけ菌のかたまりである「タネコマ」です。このタネコマにはいろいろな種類があり、秋と春の年2回発生するもの、春だけしか発生しないもの、より肉厚なしいたけが発生するものなどさまざまです。
姫野一郎商店では、このタネコマの種類まで把握し、入札会ではそこまで見分けてしいたけを仕入れています。
「原木しいたけ」の栽培について、
もっと詳しくは↓こちらもご覧ください。
しいたけの栽培方法
家庭でも「原木しいたけ」は作れる?
以上の3つさえ揃えばしいたけはご家庭でも「原木しいたけ」は栽培できます。
ただし、栽培環境が難しいところ! 一般の農家さんでさえビニールハウス栽培に頼る人もいるほど、日照時間や温度・湿度、風通しなどの条件を管理するのはなかなか難しいでしょう。
最近は原木しいたけ栽培セットなるものも販売されていますね。すでにしいたけ菌が原木にまわった状態の原木は、室内に観葉植物のように置いておくだけで、1週間前後でしいたけが発生するようです。お子さんの夏休みの自由研究などにして、家族でしいたけの成長を見守ってみるのも楽しそうですね。
大分県が原木しいたけ栽培に向いている理由
大分県は、日本一の乾しいたけ産地です。つまり、原木しいたけの生産量が日本一。その生産量は、全国の生産量の約半数で、平成27年は全国の生産量1518トンに対して、大分県の生産量は1115トンでした。圧倒的なんです。
【参考資料】乾しいたけ生産量等の推移 http://www.pref.oita.jp/uploaded/life/2542_139077_misc.pdf
では、大分県がなぜ原木しいたけの栽培に向いているのか?
その理由のひとつは、原木となるクヌギの木の豊富さにあります。昔から大分の山にはクヌギの木が多く、原木として伐り出しやすく、また成長が早いため次の原木を育てやすかったのです。
また、山間地が多く、林間地を利用して原木栽培をしやすかったこと。それに加え、地中海気候に分類される、高温多湿な気候的条件も揃っているんです。
大分といえば日本一の源泉数・湧出量を誇る温泉。豊かな海の新鮮な魚介類が美味しいことでも有名ですが、山も豊かで、その恵みもまた素晴らしいのです。
姫野一郎商店が原木しいたけにこだわる理由
姫野一郎商店は、創業以来約140年、この原木しいたけだけを仕入れ、販売することにこだわり続けています。なぜなら、原木しいたけこそ「本物のしいたけ」だからです。
何が本物かというと、まず味と香り。3大うまみ成分のひとつであるグアニル酸がたっぷりふくまれているので良い出汁がでますし、栄養の豊富さは、日本食品標準成分表を見ても明らかです。
乾しいたけのトマトカレー
また、原木しいたけは森のなかで自然栽培されるものなので、森の養分だけで育つ無農薬・無化学肥料の安心食材なのです。
さらに、嘘偽りなく産地から本物をお届けしたいという思いから、社長自らが生産者から直接買い付けたり、OSK(大分椎茸農協組合)の入札会で目利きして仕入れたりしています。
それを信頼できるお店だけに卸していますが、これを直接消費者の皆様へお届けしたいとの思いから、近年はWEBショップでも最高の原木しいたけを販売しています。
まとめ
ひと昔前までは、スーパーで見かける生しいたけに「原木」か「菌床」か明記されていないものも多かったように思います。それが、今でははっきり記してある。それは、消費者の人たちの、どちらかきちんと選びたいというニーズに応えたものでもあるのかなと感じています。
菌床生しいたけを好んで買っていた方は、ぜひ一度姫野一郎商店の原木しいたけを食べてみてください。自然栽培でつくられた原木しいたけの、その美味しさに、びっくりしていただけると思います。
「水で戻す」ことを手間に思わなくなるその美味しさ、ぜひ体験してください!
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